Mavic3 EnterpriseはD-RTK2またはネットワークRTK(ichimill)を使った写真測量ができます。
RTKを使用することで、標定点(GCP)を設置せずとも、高い精度を担保して測量が可能になる1と言われておりますが、実際の精度は一体どれくらいになるのかを今回検証しました。
そもそも標定点・検証点や精度検証とは何なのか
簡単にまとめると、以下のようになります。
- 標定点:出力データを調整するための点
- 検証点:出力データの精度を検証するための点
上記を事前にTS(トータルステーション)やGNSSローバーで測定しておき、その点に「対空標識」を設置します。
写真それぞれに、対空標識(標定点)が映るように撮影し、各写真の対空標識が実際の座標点のどこに位置しているのかを覚え込ませた上で、処理することで、データの精度を上げることができます。
そして、そのデータの精度がどれくらいなのかを出来上がったデータに映っている対空標識(検証点)の位置と実際の座標位置を比較して、較差を求める事で精度検証を行います。
標定点と検証点の設置について
今回は、当社の所持するGNSSローバー(FJD 測地GNSS受信機 RTK Rover V10i)を使用して、Ntrip方式で標定点や検証点を複数取得しました。
検証場所の地図と取得した地点の分布図は以下となります。(地図が古いので、実際の場所と一部構造物などが異なります。)
各ポイントの座標情報
平面直角座標(JGD2011 6系)、海抜(JGD2011 Vertical Height)
座標名 | 場所 | X | Y | Z |
---|---|---|---|---|
pt1 | グラウンド | -70097.264 | 35608.827 | 163.992 |
pt2 | グラウンド | -70114.516 | 35624.882 | 164.008 |
pt3 | 砂利 | -70098.09 | 35585.791 | 162.033 |
pt4 | 砂利 | -70104.947 | 35576.674 | 161.959 |
pt5 | 砂利 | -70136.587 | 35600.661 | 161.976 |
pt6 | 砂利 | -70119.467 | 35621.854 | 161.917 |
pt7 | 駐車場 | -70078.507 | 35594.849 | 163.01 |
pt8 | 砂利 | -70107.138 | 35611.368 | 161.928 |
pt1,2,7のZの高さ数値を見ていただくと、他のポイントに比べて、高さが2mほど高い位置に設置されていることがわかります。
前項の分布マップとポイント位置は若干の表記のずれがありますが、実際は緑のグラウンドに設置しているとお考え下さい。pt7はグラウンドの高さ相当の駐車場に設置しています。
上記画像を見ていただくと、白い建物が設置されている地表面(砂利)と、緑のグラウンドの高低差は2mほどになっていることがわかります。
ドローンの写真測量は水平(XY)に比べて、鉛直方向(Z)の精度が甘い2と言われていますが、こちらが検証結果にどのように現れるかが、ポイントになると考えられます。
飛行計画
- 速度:5.4m/s
- 地上画素寸法:1cm/px
- オーバーラップ率:90%
- サイドラップ率:60%
- SfMソフト:DJI TERRA
精度検証結果【ネットワークRTK 標定点なし 高低差あり】
画面上の緑色ピンが検証点の位置を示しています。
pt1(グラウンド)、pt3(砂利)、pt6(砂利)を検証点として指定しています。
この状態での精度検証結果が以下となります。
XとYの精度は非常に高く、1cmほどとなりましたが、Zについては6cmほどでした。
精度検証結果【ネットワークRTK 標定点なし 高低差なし】
画面上の緑色ピンが検証点の位置を示しています。
pt3(砂利)、pt5(砂利)、pt8(砂利)を検証点として指定しています。
この状態での精度検証結果が以下となります。
前項の高低差がある場合と比較してZの精度が少し上がりました。
精度検証結果【ネットワークRTK 標定点あり】
画面上の青色ピンが標定点、緑色ピンが検証点の位置を示しています。標定点については、公共測量の作業規程の準則に則って設置をしています。
標定点:pt2(グラウンド)、pt4,5(砂利)、pt7(駐車場)、pt8(砂利)
検証点:pt1(グラウンド)、pt3(砂利)、pt6(砂利)で指定しています。
この状態での精度検証結果が以下となります。
X,Y,Zともに精度が向上し、特にZはかなり向上した結果となりました。
まとめ
いかがでしたか?
標定点は無くても場合によっては問題ない精度を担保することができることがわかりました。しかし、高低差のある現場の場合は、Zの精度を担保するために、標定点を設置する必要性もあります。
標定点を適切に配置・管理することで、測量精度を大幅に向上させ、発注者に対しての信頼性を高めることが可能です。また、運用効率やコストの最適化も視野に入れながら、ドローン測量の可能性を最大限引き出すことができます。プロジェクトの目的や環境に応じて最適なの運用方法を選択し、正確かつ効率的な測量を実現しましょう。
当社では産業用ドローンの導入サポートを行っております。また、導入後も今回のような測量の手法についての講習などもご用意しておりますので、安心してドローンの導入をしていただくことができます。
今後も、ドローン活用に関する有益な情報や最新事例を発信していきます。ぜひ、引き続きご覧ください!